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名古屋高等裁判所 昭和57年(行コ)5号 判決 1983年3月24日

岐阜市茜部中島一丁目一一七番地

控訴人

園部恵庸

右訴訟代理人弁護士

田島好博

岐阜市加納清水町四丁目二二番地

被控訴人

岐阜南税務署長

土田昭二

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被控訴人

国税不服審判所長

林信一

右被控訴人両名指定代理人

岡崎真喜次

木村亘

右被控訴人岐阜南税務署長指定代理人

小林茂吉

苗代穰

右被控訴人国税不服審判所長指定代理人

平川正雄

小林俊夫

右当事者間の所得税決定処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の申立

(控訴人)

一  原判決を取消す。

二  被控訴人岐阜南税務署長が控訴人に対して昭和五二年三月七日付でなした昭和四八年分所得税の分離長期譲渡所得金額を金一、三二五万円、本税の額を金一九二万九、〇〇〇円とする決定及び無申告加算税の額を金一九万二、九〇〇円とする賦課決定処分を取消す。

三  被控訴人国税不服審判所長が控訴人に対して昭和五三年五月三一日付でなした右各決定処分に対する審査請求を棄却する裁決を取消す。

四  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

(被控訴人ら)

主文同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決の事実摘示記載のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人

1  本件現物出資は、当事者間に真実本件土地の所有権を移転する意思がなく、後藤延照に本件土地を奪取されることを回避するために行われたものであるから、通謀虚偽表示により無効である。従って、本件現物出資に課税することは失当である。

2  訴外会社は、形式上設立関係書類が作成されたが、出資金が払込まれず、営業活動もせず、営業所もなく、社員総会、取締役会の開催もなく、財産目録、貸借対照表等会計帳簿も作成されず、法人としての実体を見えず、本件現物出資の相手方の実体が存在していないから、右現物出資には譲渡性がない。よって、本件課税は失当である。

二  被控訴人ら

1  現物出資は、会社資本を増加させる行為であり、また有限会社は株式会社と同様に物的会社であるから、会社財産を信頼して取引した相手方を保護する上でも、資本充実の原則からしても、出資義務の完全な履行が必要であるから、現物出資については、虚偽表示の規定の適用が排除されるものと解されている。従って、本件現物出資について、通謀虚偽表示であるから、無効であるとの控訴人の主張は失当であるというほかない。

2  訴外会社は、総社員によって定款が作成され、社員総会において、取締役及び監査役が選任され、資本金五〇〇万円の払込を受け、昭和四八年三月一日設立登記を了している。従って、訴外会社の設立の無効は、有限会社法七五条一項の準用する商法四二八条一項により成立の日から二年以内に訴えをもってのみなし得るところ、当該訴訟の提起はないから、訴外会社は適法、有効に成立されているものである。そうすると、現物出資の相手方が存しないとの控訴人の主張は失当である。

また、訴外会社は、原判決認定のように、設立以降適法有効に成立、存続し、法人としての実体を見えて活動していたから、訴外会社は実体がなく形骸化していたとの控訴人の主張は事実に反し失当である。

第三証拠関係

当事者双方の証拠の提出、援用及び認否は、次に付加するほか、原判決の証拠欄と同一であるから、これを引用する。

一  控訴人

1  甲第九号証の一、二、第一〇号証を提出(ただし、第九号証の二、第一〇号証は写)。

2  当審における控訴本人尋問の結果を援用。

3  乙第一五号証の成立を認める。

二  被控訴人ら

1  乙第一五号証を提出。

2  甲第九号証の一の成立、同第九号証の二、第一〇号証の原本の存在及び成立はいずれも不知。

理由

当裁判所は、当審における証拠調の結果を参酌してもなお、控訴人の本訴請求は理由がなく失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次に付加、訂正、削除するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決一四枚目表三行目の冒頭に「1」と加入し、同三行目の「甲第一ないし第三号証」を「甲第一、第二号証」と改め、同六行目の「甲第四、第五号証」を削除し、同一〇行目の「原告本人尋問の結果」の次に「(ただし、後記措信しない部分を除く。)」と加入する。

二  原判決一六枚目裏六行目と七行目との間に、「このように認めることができ、原審及び当審における控訴本人の供述中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らしにわかに措信し難く、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。」と加入する。

三  原判決一六枚目裏七行目の「ところで、一方において、」を「2ところで、原審における控訴本人尋問の結果により成立を認める甲第四、第五号証、当審における控訴本人尋問の結果により成立を認める甲第九号証の一、原審証人位田斉一郎の証言、原審及び当審における控訴本人尋問の結果によると、」と改める。

四  原判決一七枚目表三行目の「数筆」を五筆と改める。

五  原判決一七枚目表五行目の「前掲各証拠」から同裏二行目の「総合すると、」までの部分を、「他方、前掲乙第二号証の一、成立に争いのない乙第六、第八号証、原審証人位田斉一郎の証、原審における控訴本人尋問の結果の一部によると、控訴人は、訴外会社の設立当時、本件土地及び野田名義に仮登記を経由させた前記五筆の土地以外にも、一一筆の土地と三棟の建物を所有していたが、これらの土地、建物については右執行対策が何ら採られず、かえって、控訴人は訴外会社によるマンション建設を予定していた隣接土地を後藤及びその転得者から取戻すべく訴訟準備を進めていたことが認められ、この事実に前記1認定の事実を併せ考えると、」と、同裏三行目の「前認定」を「前記1認定」とそれぞれ改める。

よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件控訴法第七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 可知鴻平 裁判官 佐藤寿一 裁判官 玉田勝也)

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